私的2011年ベストアルバム20選 


これまでのあらすじ。
以前までは、某アメブロにて音楽ブログ(笑)を執筆していたが、アメーバの鯖がアレな雰囲気になってきたし、良い機会なので心機一転しようと別なブログを立ち上げてみたのだった。
そしてついでに年末なので、新ブログでの自己紹介も兼ねて、超感覚的な駄文で今年聞いた音楽作品の中で、個人的に気に入った音源を20程リストアップ(所謂年間ベスト的な)しつつ、自分の2011年を振り返ることを決意するが、はてさて、この先どうなりますことやら。一応、不安定ではあるがちょっとした目安にするためにランキング形式にしてみた。

No.20.

GLOSS DROP [解説付・ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRC288)

GLOSS DROP [解説付・ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRC288)

Tyondai Braxtonが脱退した影響か、緊張感と躍動感が刺激的に同位し、難解なのに軽快という摩訶不思議な音像を生み出していた「MIRRORED」から、スリリングさが後退し、代わりに良くも悪くも明快さが前面に出てきてしまった印象だが、個人的には、そのシンプルな軽やかさにセルアウトしたようなポップさが乗っかったカラフルな作風にかなりほっこりさせられた。
相変わらず音作りは緻密なのだが、連想するイメージは明らかに開放的になっており、更にそこへ随所で華を添える様に登場するゲストシンガーとの相性も見事で、特にBlonde RedheadのKazu Makinoをフィーチャーした「Sweetie & Shag」は彼女の透明感あるミステリアスな歌声が弾けたビートの上を跳ね回る興味深いトラックだ。Matias Aguayoを招いた「Ice Cream」では素敵な男の渋い喘ぎ声も聴けちゃうよ。やったねたえちゃん!


No.19.
 Big K.R.I.T: Return of 4Eva

ジャケット写真を見ていると今にも「悪そうな奴は大体友達」とか言い出しそうな雰囲気が漂っている気もするが、いざ蓋を開けてみるとマッチョな厳つさは希薄で、むしろライトな音作りに徹しているような印象すら受ける。と言っても勿論、べたべたなストリングス等で飾り立てただけの軽薄な代物ではない。むしろトラック自体はシリアスな翳りを纏ったものが多いくらいだし、Eminemや50cent程に明快で思わず歌い出したくなるようなコーラスパートが多く用意されている訳でも無い。しかし、うつろな雰囲気のトラックの上で矢継ぎ早に言葉を吐き出すフロウと自重しない鋭いスクラッチが耳を惹く「Rise and Shine」やverseの上でちょいちょいと現れるファルセットコーラスが妙な中毒性を放つ「American Rapstar」、優しげなRaheem De Vaughnの歌声の包容力とメロウ曲でありながらやはり軽快に駆けるラップがいかす「Players Ballad」、ジャジーな雰囲気でフロウにも囁く様なセクシーさが滲み出ている「Free My Soul」、静寂なトラックの上で何処か俯きがちに歌う「The Vent」等、クールネスを振りまきつつも飽くまで聴きやすさにこだわったような仕上がりは優れたポップミュージックとして実に堂に入っている。硬く引き締まったフロウも言葉の一つ一つが叩き付ける様であったり、語りかける様であったりと、中々刺激的に時折表情を変えながら邁進する。小生の様にヒップホップに傾倒しきっていない人にもアピールできそうなストイックにクール×ポップを突き詰めた音源だとしみじみ思う。


No.18.

星の夜の脈の音の【初回限定盤】(DVD付)

星の夜の脈の音の【初回限定盤】(DVD付)

基本的に音から受けるイメージは、大きく括ればLINDBERGとかジュディマリの系譜に当たりそうな女子ボーカルを有する日本のポップロックバンドという感じ。花咲くいろはの主題歌を聴いてそんな印象を強く抱いていたわけで、「甘酸っぱい恋模様とかマジ勘弁ww」な小生は、本来なら彼女たちのフルレンスなど華麗にスルーしていた筈だが、本作のCDの帯にスピッツ草野マサムネがコメントを寄せていたことが気になると同時に、小生がCDを店頭(ツタヤ)で手にしたところなこちの嬉しそうな顔が頭を過ぎったので、聴いてみた。
そして、これが想像以上に胸に刺さるのである。音作りはやはり、シンプルなギター、ベース、ドラムといった楽器が紡ぐ、ほぼノーギミックな安牌ジャパニーズ・ガールズロックな趣。しかし、性急に走り抜ける凛々しくも儚げなオープナーの「セラトナ」「ハナノイロ」の畳み掛けが象徴的な様に、表向きはポジティブ、キュートな様で、実は切々と誰かの心を揺り動かそうとする切実で感傷的とも思える純粋さを特に繊細なメロディーとは対照的に可愛らしいのに力強い歌声に漂わせている様だ。それが小生の内向、ネガティブマインドを悲しくなるほど締め上げたのかもしれない。この甘酸っぱさは作為ではなく、心からの感情表現であると信じたい。
YUIとかが売れるならこのバンドももう少し評価されても良いと思うのに・・・。

No.17.

世界が見たい

世界が見たい

バンド名からして人を食ったような感じだが、歌詞から見られるメッセージ性はその態度が更に露骨だ。陽気な曲調の上でネガティブなことばかり呟いており、その中身もユーモラスにも思えるが内実はかなり下世話でどうしようも無い言葉ばかり。生き辛い世の中に中指を立てているというより、へらへら笑いながら(でも目は死んでいる)皮肉を吐き出しているような、ろくでなしで気持ちの悪い音楽。音作りには、インディロックに拠ったDeerhunterのHalcyon Digestに通じるサイケな毒素を個人的に感じたが、加えて全てに失望したような日本語のメッセージが忌野清志郎風のボーカルに乗せてダイレクトに伝わってくるので、日本人の自分には毒々しさを嗅ぎ取りやすく、改めて音楽の持つ言葉の重み、パワー(メッセージがネガティブでもポジティブでも)についても考えたりもした。
「生きたくないし 死にたくも無い」←よっ、このだめ人間! だけどハゲドーしてしまう自分が悲しい。

No.16.

James Blake

James Blake

所謂ダブステップ畠に身を置く存在という訳で、やはりその深遠でミステリアスな音響に翻弄される事に対して、リスナーとしては快感を覚えはするものの、本作においてそれ以上に魅力的なのはやっぱり歌声だ。
今年、多くの完成度の高いミックステープで話題を振りまいたThe Weekndに通じる、ソウルフルな凛々しさを漂わせた歌声に相対する幾分かの鬱っぽさをやはり彼もその作風に宿している気がする。
しかし、The Weekndの場合は歌声は清涼でありながらもその鬱要素が若干悪趣味な音像と相まって影への誘いにも似た際どい怪しさに通じていた印象を受けた。
一方、本作にはミステリアスな中にもCDの向こう側にいる存在が優しく寄り添ってくれている様な温もりを感じる。
それはやはり彼の歌心に依る所が大きい、と言うのは多分間違いないと思う。トラックは血の通っていない冷ややかさが要所で漂っているにも関わらず、彼の歌声には一貫した芯の太い熱情が脈々と息衝いている。
そういえば、この歌に感情を揺さ振られる感じ、ここ数年でも体感した記憶がある、と思ったら、そうか分かった『Antony & The Johnsons』だ。彼の音源を初めて聴いた時の感覚に近い。
音の組み立て方は明らかに異なるし、歌声もAntony程リリカルに声色を変えて風景描写をしている訳ではないが、一聴するとメロウな歌声の根底に熱い魂を注入している辺り、実は歌い手としては近くに位置しているのでは、と個人的には思ったり。
ダブステップというと、やはり飽くまで空間的な音の歪み、奥行きこそが醍醐味であり、歌声さえもその不可思議な音響世界にリスナーを沈み込ませる為のパーツの一つ、として機能している場合が多そうなのに、本作においてはむしろ、歌声に秘められたパッションを最大限引き出す為にこそ音が木霊している、そんな風に思えてしまう。
このJames Blakeという男は、ダブステップの、或は音楽の新たな可能性を歌の為にこそ切り開かんとする明確な意志を抱き、ジャンルが細分化し、そして先細りしそうな凡庸なシーンへの危機感を払拭しリスナーを繋ぎ止める、極めて重要な新世代ミュージシャンの一人と言えそうである。
テン年代に突入しても、こういうフレキシブルな創造力、確固たる才能を持った若手ミュージシャンがパッと出現してしまうのが実に刺激的だし、頼もしい。
とにもかくにもクラブで踊ってる場合じゃない。
ここには、テン年代以降の希望的観測を察知出来る音が広がっているのだ!


No.15.
+HIRS+: worship' one sided 7

今年一番笑った音源。10曲入り、最長曲は45秒。最短は8秒。曲のタイトルは曲順に合わせたローマ数字が振り分けられているだけ。やる気あんのかww
曲間の違いなんか考える暇も無く、カオティックなシャウト、ノイズを乱射するだけの愛すべき馬鹿グラインドコア。ただでさえ演奏時間短いのにちょいちょいスキットも交えつつ、結局はギャーギャー騒いで即終了。
ボーとしながら聴いていたら、恐らく「アレ、次の曲が流れてこないんだけど。」ってなること請け合い。因みにマシンガンの様なドラミングはかなり格好いいぞ!
愛も憎しみも、戦争も平和も、悲しみも喜びも、メッセージは一瞬の衝動に全て込める。これこそ音楽のあるべき姿だ。だって、僕たちは瞬間に生きているのだから。(この人達が何歌ってるのか知らないけどね!)
歌いたいことがあるんなら、一分以内に全部ぶちまけろ!!



No.14. V.A.: Groundbreaking 2011
 


ヒロイックな女性ボーカルが立った90年代歌謡テイストのメロディーに、時に流麗、時にぎらつくループ音が効いたトラックが派手なfripside風の「rePrayer」、ロリボイスが耳を惹くキュートなテクノポップ「KISS CANDY FLAVOR」はPerfume或いはAira Mitsuki風、他にも強靱なブレイクビーツが豪快に波打つProdigyやブンサテを彷彿とするロック×テクノなナンバー、清らかだがミステリアスなまりん風味のラウンジミュージックっぽい曲なんかもあったり。総じて、俺のような俄でも様々な前例というか、「この曲アレっぽい」的な連想が出来てしまう場面も散見できる訳で、格別斬新な音楽が次々と展開されている訳では無いかもしれない。
しかしだ、単なる亜流ばかりならキッチュなエレクトロの飾り立てに萎えてきてしまうところを、本作の中の人は何れも独自のフックを提示しており、多種多様な仕掛けが施されたエレクトロミュージックが次から次へと飛び出す様は、まるでアミューズメントパークのような無邪気な楽しさがある。
元々がフリーの音ゲーBMS)用に書き下ろされた曲を集めた企画盤と言うこともあるだろうが、最近のcapsuleの作風に通じる小難しさ、インテリさを排し、ひたすら快楽を追求する、まるで悪いドラッグでトリップする様ないい感じに電波が混入した電子音の過剰分泌は圧倒的ですらある。何せ、三枚組の計35曲というはち切れん程のボリュームを、フリーダウンロードで堪能させてくるのだから。
考えたら負けだ、とにかく体感しようじゃなイカ!これでアゲにならないなんて、お前ら人間じゃねぇ!



No.13.

liminal(初回限定盤)(DVD付)

liminal(初回限定盤)(DVD付)

どうしたリア充?踊れよ。
昨年出た石野卓球のソロ作とは全く違った切り口で独自の電子音楽世界を築き上げてると思う。
卓球さんのソロ作には確信犯的な毒の要素がありながらも何処かフロアに対応した熱気も感じたのだが、本作に関してはとことん熱量を排してる印象を受ける。
音の粒子が緻密かつ強靭なビートとして構築されている音作りこそスタイリッシュな質感だが、ここで鳴らされる音が描き出す空気はどこまでもダウナーで、内省的。
「Natural」や「Bluelight」からは無表情な音の反復が荒廃した空間をさ迷っている様な寒々しさに襲われ、時にノイジーに響き、時に重々しく伸し掛かる音像が脳裏に突き刺さる「Beat It」や「Capacity」では毒に侵され、そしてラストのタイトル曲で異次元を漂ってる様な浮遊感すら覚える程の美しさに酔いしれる、等と曲毎に雰囲気を変えながらも、ストイックな面持ちは決してぶれる事はなく貫徹している。
ヒットチャートを眺めているとDQNリア充が戯れ、踊る華やかなクラブとかを連想しがちなテクノ、エレクトロニカ界隈の方々が幅を利かせている気がするものの、当然それだけがエレクトロ・ミュージックの魅力ではない訳で。
少なくとも本作に関してはそういう連中を躍らせる気は一切ないであろう、突き詰めて内へ内へと沈み込んで行くミステリアスな翳りが蠢いている。
スリリングに響く音の一つ一つが酷く冷淡で鬱々としているのだ。
質感として、初めは丁度最近聴き直していたAPHEX TWINの1st辺りに近い印象を受け、リピートするうちに「The Fragile」を出したくらいの鬱絶頂期NINやRadioheadの「Amnesiac」とかにも通じる底無しな暗さを連想した。
これは完全にアゲの為の音楽ではなく、引きこもる為の音楽に違いない。(笑)
なんて素敵なメランコリー。
いいぞ!もっとやれー!!


No.12.
  Frank Ocean: Nostalgia,Ultra.

もしあなたがオリコンチャートに蔓延る日本産会いたい系ワナビーR&Bを無意識に聴かされることによって、リズムアンドブルースというジャンルそのものに違和感や嫌悪感をいだいているとしたら(というか俺自身が割とそんな感じだった)、このミックステープを聴けば或いはそうした否定的な感情は緩和されるかもしれない。
煌びやかなトッラクの上で響かせる朗々とした歌声は甘くほろ苦く、幾分かのセンチメンタリズムも持ち合わせていると思う。主軸となる彼の「歌」には多くのリスナーを酔わすには充分なムードを生み出す歌心が備わっていることも事実だ。しかしそれだけなら結局一番の顧客はオサレ系スイーツがメインになりそうな所だが(別にそれが悪いことでは無いが)、個人的に面白いと思うのはカニエの巧みなサンプリングセンスにも似たColdplayMGMTと言ったロック畠の人気者の音源を随所でネタ的に持ち出して楽曲に組み込むというユーモアである。耳の肥えた音楽ファンなら必ず一回は聴いていると思われる、僕らのRadioheadの大傑作「Kid A」から「Optimistic」を引っ張り出してきて、クソビチに「退屈だから止めてよー。」的なことを言わさせてしまうスキット「bitches talkin’」なんて、実に痛快ではないか。「お前らが神の様に崇めているレディへ様も、リア充の前ではこんな陳腐な存在でしかないんだよ。」というメディアのプッシュするものを盲目的に支持する音楽ファンへの皮肉をたっぷり込めたメタファーか、もしくは、「最近のヒットチャート好きリア充は音楽の上辺しか捉えようとしない。」という音楽を愛するクリエーターとしての嘆きか、彼のメッセージの真意を私は知らない。ただ、推察できることは、本作が耳あたりの良さだけを追求したワックには思いつきもしないであろうジョークを各所に散りばめた非常に興味深いR&Bの音源ということだ。純粋にポップミュージックとして聴いても質の良い旨味を味わえるが、その奥で不敵にほくそ笑む様な性格の歪みこそ彼の音楽の素顔なのだと私は解釈している。世間的な王道に逆らうようなシニカルな視点を持ったミュージックを愛聴する人にこそ響くものがありそうである。


No.11.

Back Room -BONNIE PINK Remakes-(初回限定盤)

Back Room -BONNIE PINK Remakes-(初回限定盤)

これは完全に良い意味で肩の力が抜けた作品。
セルフカバーを中心にアコースティックな音色を基盤にしつつ彼女の歌声へ主にスポットを当てたアルバムに仕上がっている。故にアバンギャルドな実験生は希薄だが、音数を抑えてシンプルなアレンジにこだわった分、楽曲の骨格とも言えるメロディーの秀逸さや、純度の高い歌声等の剥き出しになったスッピンの魅力がしっかりと伝わってくる。
彼女もまた、90年代からゼロ年代を日本音楽シーンで安定した売り上げを維持しながらテン年代に突入した現在までサヴァイブしてきた存在の一人であるわけで、例えば「Heaven’s Kitchen」の様な発表から10年以上経過した様な楽曲を歌っても、経年劣化を感じること無く、むしろ若手には出せないであろう円熟や貫禄が伴った余裕すらそこに漂わせている。
過剰な装飾を避けた編曲の切り口も興味深い。例えば先に挙げた「Heaven’s Kitchen」にしても、原曲の様なメロウな質感の内部に脈々と息づく若さ由来のパッションはやや後退したようにも思えるが、ソフトなリメークによって、その分煌びやかで温かな質感は明らかに増し、落ち着いた彼女の歌声が味わい深くジワジワと胸に染みる。
それは新たに書き下ろされた「Look Me In The Eyes」でも変わらず、時代の時々である程度音楽性を変えながらも、根底にある精度の高いポップネスと何処か陰を帯びたような憂い、それでも前を向くような凛々しさを併せ持った歌声はいつの時代もぶれること無く前進を重ねながら貫徹されている事の表れでもある、と私は感じた。
下手すればものすごく退屈な作品に陥りかねないセルフカバーをキャリアと才能に裏打ちされているからこそ響く、赤裸々だが珠玉のポップミュージック集にまで昇華した力作だ。

No.10.
Mr. Muthafuckin’ eXquire: Lost in Translation

ジャケからして不健全な香りがプンプンするが、中身の方もその期待に添った何とも身体と頭と教育に悪そうな潔く厳ついペアレンタル・アドバイザリー必須の高カロリーヒップホップである。
正確なリリックは和訳も無く、英語力も乏しい小生には分からないが、恐らくは尻軽な女を呼んで、ゴージャスなアクセサリーとドラッグをちらつかせて、体制に楯突いているのだろう。とてもポップには思えないおどろおどろしいトラックから聞こえるサイレン、セクシーな女性コーラス、フェラチオする女のスキット、過剰に太いビート、切れたスクラッチノイズ等に加え、あちこちで吐き出されるファックの言葉を嗅ぎ取れば英語を完全に聴き取れなくともこの音を充分に楽しむことは出来る筈だ。
リッチに成りすぎて試行錯誤が窺えるMCや作り手とは違い、一貫したアングラさである。前述の通り様々なギミックを盛り込んだ派手さはあるが、例えばWatch The Throneで聴けるような煌めきは皆無に近い。「Lovesponge」等で展開するメロウにはなり切らず、仄かにポップネスを漂わせるナンバーでは確かにインテリジェンスも感じはするものの、飽くまで不愉快な喧噪の渦中にリスナーを放り込む猥雑さの上での小休止程度にしか過ぎない感じである。とにかく全体を覆うイメージがハードコア然としている。だからこそラスト二曲で見せつける靄が晴れたような美しさに酩酊してしまう。このメタボにでもなりそうな濃厚な味付けが美味しくて堪らない。



No.9.

艶℃(初回限定盤)(CD付)

艶℃(初回限定盤)(CD付)

全編通して、いかにも石井秀仁らしいキッチュなエレクトロ要素で完全武装したレトロフューチャーニューウェーブ
なんて書き方をしたらGOATBEDの延長っぽい印象を与えかねないが、今回は正式メンバーにツインギターという編成を活かしてか、比較的テクノ/エレポップの範疇を重視した趣だったGOATBEDに対し、こちらはより突発的にガシガシ攻め立てる感じ。そして、基盤を支えるのはポップと言うより飽くまでロック、的な。
荒々しさの一方で独自の美意識も追求している辺りはポジパンに由来しているのだと感じるし、サイバーゴスなヴィジュアルも含め秀仁のルーツをはち切れんばかりに詰め込み、亜流フォロワーを一切寄せ付けない(ていうか相手が近づきもしない様な)徹底したニュータイプ80年代ミュージックを展開している。
けばけばしいエレビートに刺々しいギターの音色、過剰なまでにサイバーな雰囲気を醸し出すシンセの演出等、目まぐるしく押し寄せる音の波を艶やかな秀仁ボイスが颯爽と乗りこなしていく。
相変わらずの抽象的で語感重視な歌詞にも拍車が掛かり、歌詞カードの読みにくさの鬼畜仕様からして、恐らく歌声も音楽を成立させる楽器の一部くらいにしか捉えてないと思う。
性急なスピードにノイジーな音響が荒れ狂う、のっけから真骨頂なデジパンク「BLACK RUNWAY OF DEVILS」、硬質で攻撃型なボディ・ミュージック風ビートにぶっきらぼうなボーカルが腹に響く「E-Z」、完全に機械的な音作りに支配されながらも、一際立った歌謡曲的なメロディーやセクシーな女性コーラスが切なくて味わい深い「EPOC TRACE」、ミドルテンポの上で肉感的な歌声と猥雑なノイズが絡み合う「THE 艶℃BABY」等、進む先を完全に見据え、そこに向けて全力投球。
80年代厨達の本気が炸裂するゴシック、ハード、ダーク、ポップ、グラマラスなミュージックショー。
何より、単なる懐古主義ではなく、その視線は飽くまでネクストレベルに向けられている所がいかす。
メンバー各々の音楽におけるバックボーンがスリリングな音塊となって胸を撃ち抜く、刺激的な一発。
因みに、CD二枚組タイプのDisk2に登場する岡村靖幸鈴木慶一と言った錚々たるメンツによる本編の原曲何処行った?リミックスも強烈。
ミュージックマガジンK-POPでもPerfumeでも安室奈美恵でもなくテン年代に放たれたこのノスタルジー・ニューポップをもっとプッシュするべき。


No.8.
Main Attrakionz: 808s & Dark Grapes II

ヒップホップの音源としての本作を取り巻く空気感は、サイレンや銃声などが鳴り響くギャングスタ・ラップやテンション上げ系なバウンスビート塗れのパーティミュージック集などと比較すれば中々に異質だ。案の定リリックの正確な和訳は分からない状態なので、基本的に言葉よりも音作りの方に耳が行く聴き方になるだが、ストリートの喧騒からは距離を置いているし、今年流行のダブ・ステップと同じく本作を流しながらクラブで踊りたいと考える人は恐らく少数ではないだろうか。ダブやチルウェイヴの領域にまで踏み込んだと思われる冷ややか、深遠、ミステリアスな要素を多く盛り込んだトラック、そこに淡々としたフロウが木霊すると浮遊感やスピリチュアルなムードすら生じている。
反響するラップとWashed Outを彷彿とする無垢なシンセ音が深い森を彷彷徨っているような気分にさせる「Chuch」、これまた今年良質なミックステープを世に放った粘り気を感じるフロウが印象的なA$AP Rockyと共にダークでドープな空間を描く「Take 1」、「Perfect Skies」に至っては、優しく響くピアノの旋律と透き通る様な女性コーラスをループしたトラックとどことなく物憂いなフロウが放つ清らかさが陶酔ものの魅力を放っている。
様々なプロデューサを招いて制作したことが功を奏しているようで、前述したようなドラマチックな音から「Regrets」のようにフロウを引き立てる為に裏方で華を添えるものまで、本作はとにかくどの楽曲もサウンドワークが実に秀逸で、それが異質な空気を生み出すのに拍車を掛けているのだと思う。そしてそこにMCが巧みにラップを乗せていることも忘れてはいけない事実だろう。
ラップミュージックを通して、神聖な空気を吸い込みたければ本ミックステープをダウンロードすることを強くおすすめしたい。


No.7.

TOXIC

TOXIC

メタルやらクラブサウンドやらを組み込みつつも、全体的に王道ダークヴィジュを邁進する様な作風だった前作から一転、今回も相変わらず、エレクトロもヘビィネスも貪欲に吸収しながらも、これまでのちぐはぐな雰囲気はかなり払拭され、吐き出し方が益々洗練されてきた様だ。
結果、受ける印象がヴィジュアル系の枠を越え、より多勢にアプローチ出来そうなラウド/ミクスチャーミュージックとして堂に入った佇まいをしている、という。
正直、「VENOMOUS SPIDER’S WEB」「VORTEX」等でのテクノ要素の取り入れかたは何処か小手先の業っぽく思えるし、「RUTHLESS DEED」「PSYCHOPATH」等のダーク/デスな表現方法にしても例えば先人『DIR EN GREY』程の禍禍しさや直情的な狂気には及ばなく、やはり何処か理性が伴った器用さを感じ取れてしまう。
ただ、このバンドの場合それで良いのだ!、と私は思う。
以前、ボーカルのルキは「憧れの先輩と同じ事をしても意味がない。それをした事で勝ち目がないのは分かっているから。」という旨の発言を雑誌でしていた。
だから、彼等は自分達がやりたい事であったり、好きであったりする他所の様々な魅力を飲み込み、飽くまで独自の味としてアウトプットする。その術が作品を重ねる毎に巧みになり、ようやく一つの到達点に達したのが本作ではないだろうか。
ファストな勢いと鋭く響く演奏でストレートにポップネスを鳴らしたパンキッシュナンバー「SLUDGY CULT」、ヘヴィーな音像が渦巻くデスシャッフル「MY DEVIL ON THE BED」、アグレッシブな展開を取り持つ中盤の叙情的なバラード二連発「UNTITLED」「PLEDGE」等、ハードコアなスタンスに思えつつ、今回はどの曲にもこのバンドの持ち味であるメロディアスで明快なフックが効いているのだ。
また実質的なラストナンバー「TOMORROW NEVER DIES」のメッセージにも注目するべきだろう。
NIL』以降の彼等の作品は何れも、失望や悲哀の漂うミディアムバラードで締められる事が常だったが、今回は軽快なエモロックでそのタイトルからして象徴的な、何時になくポジティブなメッセージを掲げている。
「Don't kill yourself」
徒に死や悲劇を歌うのではない、苦境を乗り越え必死に前を向く姿が今のthe GazettEを体現している様ではないか。
適度なコアさとセルアウト臭、「上手い」と「美味い」が良い感じに調和してきた刺激的な音の一打一打が爽快に胸を打つthe GazettE初の核心盤!
「聞こえているかい?」


No.6.

ウォッチ・ザ・スローン(初回完全限定盤スペシャル・プライス)

ウォッチ・ザ・スローン(初回完全限定盤スペシャル・プライス)

もしかしたら、初っ端の「No Church In The Wild」が既に本作の全体像を端的に表現しているかも知れない。
幕が上がった最大級のショーに対して期待感を早速くすぐられる硬いビートが鼓膜を刺激し、Phil Manzanera、Spooky Tooth、James Brownを大胆かつ巧みにサンプリングした渋いトラックに昂揚、更にFrank Oceanによるほろ苦い歌声に酔い、もう一人の客演シンガーThe Dreamのセクシーな声色でなぞられるミステリアスなコーラスにハッとする。
これだけでオープニングの質感としては余りに贅沢な仕上がりだが、加えてそこへ圧倒的なキャリアに裏打ちされた二人のMCによる貫禄のヴァースが載ってしまう。
ジェイがJesus was a carpenter, Yeezy laid beats/ Hova flow the Holy Ghost Get the hell up out your seats と威厳を示し、カニエはWhen we die the money we can’t keep/ But we probably spend it all Cuz the pain ain’t cheapと戯ける。
ライムに虚勢ではない説得力の伴った鋭利な切れ味が備わった、この二人だから許される説教(preach)である。
その後も、抜群な声量から放たれる伸びやかであり太くもある歌声が強烈に映えるJay-Zの嫁ビヨンセ参加の「Lift Off」、シリアスなトラックでリリックには優しさが生まれた「New Day」、軽快なビートにこれまた豪勢なサンプリングを織り交ぜって突っ切る「That's My Bitch」、オープナーから再登場のFrank Oceanによるスウィートなフックと美しいトラックで浮遊感さえ漂わす「Made In America」等々、ポップミュージックとしても、ヒップホップとしても上質なナンバーがズラリと並ぶ。
ひたすらストリートで牙剥き出しっぱなしのギャングの傲慢でも、ましてちんけなパーティーポップの馬鹿騒ぎでもない強度が本作にはある。
その異質なまでの強さの大本は、何て言うか、すんげー金掛けてるんだろうなー、みたいな事に起因するのだと思う(笑)。
飛び抜けたリッチさ故に成り立っている、厳つくて趣味の悪いハードコアなアングラさとメインストリームに殴り込む豪勢なポップさを同位させたカニエ×ジェイ Zならではの味わい深い魅力を惜しみ無く披露している訳で、当然内輪の単なる道楽では終わっていない。
Pitchforkで満点を叩き出したカニエの『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』は革新的なアイディア、ユーモアで以て一曲一曲が鮮烈な存在感、灰汁の濃さを有していたにも関わらず、尚かつ一枚通して聴いた後に更に壮大なストーリーが展開されていた様なトータリティの高さまで提示し、形骸化されたラップミュージックの枠を越えた傑作でしたが、本作にはああした深遠さ、懐の深さなどは希薄な印象を受ける。
ここにあるのは、押し寄せる予見不可能な衝撃や感動、ではなく、豊富なサンプルに華やかなゲスト、強靭なビート、そして、下積みを疾うに経てすっかり勝者な主役二人の自信とスキルに満ちたラップが織り成す、飽くまで期待通りの安定したスリル。
ゴージャスに次ぐゴージャスでジャケまで金ぴかになってしまう事態。
滑稽なまでにセコさを排除したブルジョアな振る舞いで王座を不敵に眺める。
「俺等が組んでる時点でヤバいのは当然だろ?」という絶対的安心感だったり、或いは、「金掛けて優れたミュージックを生むってのはこういう事だぜ。」的な、荘厳さだとか作品への評価までも悠々と金と名声で平伏させてしまう、こうした自己顕示こそ本作で彼等がやりたかったことなのでは、とすら思ったり。
結果、元来濃厚な味付けが好みな小生は、コアなヒップホップファンの方からしたらキッチュにすら思え兼ねない本作を高級な食材を次々と金掛けて調理した、偶のフルコースでも目の当たりにした様に、どこかでたじろぎながらも喜んで何度も腹に詰め込むのでありました。
こんなの食べちゃう俺まじリッチ。
寂しい、恋しい、会いたい、そんな口に合わないワックなビタースイーツはビッチの口にでも捩込んどけばいいのさ(キリッ・・・とか言ってる時点で俺はやはり裕福ではないが、だからこそこんなセレブリティーに憧れる。


No.5.

megaphonic(初回生産限定盤)

megaphonic(初回生産限定盤)

何て伸びやかで心地よい音楽なのだろう。
90年代をすさまじい勢いで駆け抜けたジュディマリ解散以降も衰退すること無く上質なポップミュージックを多くオリコンチャートに投下してきたYUKIであるが、ここ数作での益々円熟した歌声や作風には本当に目を見張るものがあると思う。正直、そこまで熱心に聞き込んでいた訳でも無い俺がこんなことを書いて良いのか分からないが、ジュディマリのそれこそ一部では神格化したような扱いには結構疑問を抱くことが多い。それは取って付けたような乙女心を吐き出す亜流ジュディマリフォロワーの生き急いでいる感や惚けている感を尻目に、ゆとりを持った自由な作風で連中を煙に巻くようなソロミュージシャンYUKIのアティテュードがジュディマリの頃の所謂カリスマ性(とよくテレビで紹介されている気がする。)より遙かに艶やかで、刺激的だと俺が感じる事に起因するのかもしれない。
近年のYUKIの歌声は勇壮でキュートでは無く、もっと男を発情させかねない肉感的なエロスがある。最早何の新鮮味も無いはずである近年のJ-pop御用達の4つ打ち曲「揺れるスカート」、一際エレクトロ寄りの「クライマー・クライマー」等、前作以上に音色がケバくなった様に思えかねない場面においてもアレンジャーの手腕と歌い手の味が加われば、テクノ紛いとは一線を画するムーディーな空気を描いた彼女ならではのポップスの雛形として成り立つ。普遍的で王道なラブバラード「ひみつ」におけるストリングスやピアノの余りにベタな装飾や彼女にしては下世話な言葉も今だからこそ感涙出来る美しさを伴ってリスナーの心に溶け込むのだろう。
セルアウトすることなく、またスノッブ臭い堅苦しさも無く、一筋縄で大衆に迎合しないロックっぽさがあり、音楽ファンが食いつきたくなる様な崇高に思えるポップスネスもあり、JKも憧れる感じに聴きやすいJ-popでもある。これで売れてもいるんだから、ちょっとムカツクくらい理想的な立ち位置だ。


No.4.
  The Weeknd: House Of Balloons

DRAKEのフックアップで注目を集めたAbel Tesfayeのプロジェクト。
DRAKEプッシュという事で勝手にヒップホップ界隈の方かと思っていたら違って、ジャンル的には一応R&Bという位置付けが妥当な感じ。
R&Bというと、近年ではすっかり本来の意味合いを無くし、ヒットチャート直結のセルアウト臭ばっかりが漂うスイーツ向け音楽、みたいな印象(偏見)を抱きがちになってしまいそうだが、一口にR&Bと言っても他のジャンルと同様、当然複雑に細分化し、ミュージシャン独自の色が出てくる訳で。
ここには、浮ついたチャラさ、ヤリ○ん、ビッチな下世話なセクシーさはほとんど感じず、リア充の痴話喧嘩等とは性質そのものが異なる、ミステリアス、シリアスな空気に支配されている。
本作の軸と言っても過言ではない比較的ハイトーンなボーカルは徒にオートチューンなどの香水を振り掛ける事なく、真の意味での艶やかさを有しており、一方では物憂いな表情も想起させる。
それと呼応する様に、或はその歌声の魅力を最大限引き出す為に、歌メロは基本的にマイルドでありながらも、その奥では繊細なメランコリーが立ち込め、過剰な主張をする事はなくとも、シンプルな音の一つ一つがメロウ、ディープな陰を纏ったムードを作り出すのに奮闘している印象である。
クールな音像でありながらも、歌が放つ体温が確実に宿っている音楽性や仄かに内包しているダブステップ要素から、個人的には今年各所で大好評のJames Blakeを連想したりも。
ここぞで涙腺を刺激するコーラスの重ね方や、硬質かつ無機質なビート、ととことん冷淡で、時に美しくも狂気的であるループ音等、トラックの冴えも抜群で、「Coming Soon」ではヒステリックな女性の日本語による台詞をサンプリングするというアバンギャルドな側面をあからさまに提示している。
そう、これは単なる夜のリラックス促進剤ではなく、悪魔の調合と言えそうな明らかにリスナーの神経を痺れさせる毒薬でもあるのです。


No.3.

魔女狩り

魔女狩り

初っ端「90年代」では開始早々過剰な程に仰々しいディスコビートを叩き付け、次の「バブル」ではイントロ聴いた瞬間にタイトル通り、嫌でもジュリアナ東京等のバブリーな時代背景を想起させてくる。
90年代初頭な頭二曲を抜けると、続く「待つ女」「火の鳥」では前者はミドルテンポ、後者はファストと体感スピードは異なれどどちらも昭和ムード歌謡の様なメロディーを展開しており、更なるタイムスリップ。
しかし、時代錯誤なギミックで威嚇しながらも、単なる虚仮威しでは終わらず、バリバリに歪む破壊的側面もドラマを後押しするしなやかな側面も兼ね備えたバンドアンサンブルや渋い低音ボイスから、上擦り気味な不安定さ、耳がキンキンする程の高音まで吐き出す表現力豊かなボーカルというメンバー各々のスキルや存在感が光りまくっている所が味噌。
中でも、このバンドの濃さが一発で伝わるってくる「フランス人形の呪い」は呪術的でおどろおどろしいボーカルのヒステリックな感情の高ぶりが聴いてて身震いしそうな程強烈。
その後も、仄かに香るポップネスとダンサブルなリズムが爽快な「80年代」、終末に向かい荒々しくなるリリカルな演奏が物悲しい演出を助長する「コスモ」、ラストはロック的ダイナミズムとベタなまでの泣きメロが手を取り合ったロッカバラード「棘の海」で感動的にフィニッシュ。
最初から最後まで、引き出しの多彩さを提示しながらも、灰汁の強さは終始健在で突っ切る様に尽くツボを撃ち抜かれた。
テン年代の訪れと共にTHE BAWDIES毛皮のマリーズ等ともまた違う時代逆行型の素晴らしいバンドが出現したものである。
まるでカルトムービーにも似た狂気を孕むセンセーション。
これを単なるポーズと取るか、それとも・・・。
少なくとも小生は完全に惚れた。


No.2.
Clams Casino: Instrumental Mixtape

ヒップホップ畠のトラックメーカーが放つ、タイトル通りラップ等の「声」ではなくサンプリング等を駆使した「音」のみで綴るミックステープである。私にとって本作は恐らく、淡泊な生活に明色を塗る為のBGMや疲弊した心をケアするためのアイテムとしては機能しない。荒んだ心を落ち着けてくれそうな流麗なサウンドは確かに展開されてはいるが、単なるヒーリングミュージックとして聞き流すには余りに中毒的だ。神秘的な幻想を夢見させる、幻惑的なドープ成分がこの言葉無き音源集には閉じ込められている。
降り注ぐ雨粒の様にきめ細かく、透明感に満ちた狂おしいほど不穏な音像はアンビエントとかダブ・ステップと言ったジャンル云々の壁を越えて、脳裏に溶け込み、理性を蝕む。
これは痛んだ傷口の根本的な治癒では無く、傷の痛みを一時的に麻痺させる為の音楽だろう。


No.1.

テイク・ケア

テイク・ケア

  • アーティスト: ドレイク,リック・ロス,リル・ウェイン,シャンタール・クレヴィアジック,ザ・ウィークエンド,リアーナ,バードマン,ニッキー・ミナージュ,アンドレ 3000
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル インターナショナル
  • 発売日: 2011/11/30
  • メディア: CD
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ヒップホップのリリックに登場するものは? ラップするテーマは? ジャンルから連想するイメージは?
Fワード? Nワード? 自己顕示? ワックへのディス? 泥臭いサグライフ? アンチ体制? あの娘がどれだけ淫乱か? ドラッグでどれだけハイになるか? 
恐らく全てあり得る。バイオレンスで近付きがたいクールネスが魅力のやばいミュージックっていうのが俺が理想とするヒップホップのパブリックイメージだ。
甘っちょろい応援歌なんて偽物で正直口に入れたくは無い。無責任に片思いの女の子の背中を押すだけのJ-popミュージシャンがヒップホップユニットと名乗ることには流石に違和感しか覚えない。もっとハードコアに、或いはスマートに、クールに成らなくちゃ。
・・・だけどね、あるんだよ。ここには浮ついていない真摯な優しさも美しさもあるんだよ。こんなにもナイーブで繊細で人懐こいヒップホップに出会えた事がとっても嬉しい。最高だ。





2011年を振り返って・・・。

2011年を振り返ってみると、世界的にみても色々と過酷だったりしんどかったりする出来事が多かった様に思うし、とにかく少々普通ではない様な一年だったのではないかな、と低能なりに感じています。そんな中で、俺の不平など実にちっぽけなものなのかもしれないし、俺の想像を絶するご苦労をされている方を思うと軽々しくこんな事を口にして良いか分かりませんが、個人的にも2011年はろくな一年ではなかった。ちょいちょいと貴重な体験や出会いもあったりしたけど、それ以上に何処か空虚で大切な身内にも結構不幸なことがあったりして、だけど俺には特別な事も出来なくて・・・。
あんまり俺のどうでも良いプライベートを垂れ流すのもアレだけど、そんな中で例年以上に音楽に支えられている様な一年だった気がします。別に格好つけて書いている訳では無く、他に楽しいこともあまりないし、純粋にその様に感じる機会が多かったのです。例年以上に金欠で、新譜の購入は余り出来なかったのだけど、歩いて行ける距離にツタヤがオープンして、二週間くらい待てば邦楽の新譜はレンタルできたので、ミーハーなものだから節操なく手を付けていた。ツイッター等で公式フリーダウンロードの情報も結構入ってきたりして、そこでも刺激的な音楽に多く出会うことが出来たと思います。中でも、ヒップホップはフリーのミックステープでも完成度が高いものが次々とネット上にうpされて、カニエ×ジェイの作品を発端に再びヒップホップ熱に火が付いた事もあり、貪るように落としていました。その結果、自分の年間ベストもその界隈の音源が多く成ってしまいました。ネット上だけで生産と消費が行われる、という新しい音楽ビジネスの土壌が益々固まってきたことを感じさせる興味深い事象かもしれないですね。
記事先頭の完成度の低いジャケ写のコラージュは適当に、今回自分が選出しなかったけど、チェックしていた作品を中心に並べてみたのですが、年間ベストと言っても趣味で勝手に書いているクソ素人のものなので、特に上位の作品以外は気分次第で他の作品と入れ替わりそうな感じもしますw
それ位、今年は色々と面白い音楽に出会えた気がしていますね。
そんなこんなで節約しつつも、割れにはならずに音楽を出来るだけ沢山聴こうとした、良いんだか悪いんだかよく分からない音楽ライフでありました。
因みに上記でアマゾンアフィリではなく、画像を貼り付けている音源は全て合法フリー配信がされているものなので、ググれば簡単に手に入ると思います。俺の抽象的な文章では魅力が伝わってない部分が満載だと思いますが、未聴で興味が湧いた作品があったら是非探してみて欲しいです。(←お前がリンク貼れや、とか言っちゃう系?)
そういえば以前、(確か)久保憲司が「音楽に癒やされるなんて言う奴は大嫌いだ。」的な事を雑誌で述べていて、人に流されやすい小生は何となく「音楽に癒やしを求めてはいけないのかー。」と心の何処かで思ったりしましたが、今年改めて「別に良いじゃん。音楽に癒やされても!」と考える様になりました。
少なくとも今年私は、「新しい音楽に出会う。音楽を聴く。」という行為そのものに癒やされていたとしみじみ感じている次第です。そうすることで、自分のつまらない生活に少しだけ新鮮な光が差し込んだように思えたのです。
うだうだうだうだと、中身の薄い文章を垂れ流してきましたが、とりあえず年の瀬を無事に迎えられた事に感謝しつつ、2012年もこんな感じでイタいブログを書いていければ、それはとっても嬉しいな、と思ってしまうのでした。
後、プライベートも何とか充実させたいです!(迫真)
はてなでの初エントリがこんな内省的な意味不明の内容で読んでくれている方には申し訳なく思っています。
こんな感じのかわいそうなお友達ですが、何卒よろしくお願いいたします。